rumbling rebels

Translations of Rock Lyrics,and so on! Beat Goes On And On!

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Location: TOKYO, Japan

Monday, July 26, 2010

ラジオスターの悲劇(dedicated to 696)

とある日の仕事中、彼は、今日は、天気も悪いみたいだし、
残業を切り上げて、帰ろう。と 定時終了時間の30分前に決意した。

明日は、休日だし、半月ぶりにウィークディの夕方は自由になるし、
なにかスペシャルな事はないかな?と 手許の仕事に98%を集中した、
残りの2%で、考えていた。

今日は、月の一週目だよな。。。彼には 大・大尊敬するロックンロールDJが
2人いるのだが、一人は、最近はしっかりと某放送局で順調に 滑らかな例の
語り口で、DJを不定期に続けている。もう一人のDJは、今年の夏、メインの
活動の場であるクラブや、ライヴイベントで、もう、十年以上も、一緒に
ご機嫌なロックンロールレコーズを 数えきれない程回し続けて来た同士を
不慮の病で、失ってしまった。運命は あまりに過酷な試練を 今年一年、
しがない一市民たちに 与え続けて来た。
何の為に?それは まだわからない。
多分、数十年、たってから、答えがグラデーションのように 空の果てに
滲んでいく、のかもしれない。

DJは 多分、相当の決断をして、この初夏、某コミュニティの放送局で番組を
スタートした。相棒が直った暁には、一緒にパーティーを繰り広げたかった
はずだ。

彼は その番組の事も、相棒の病状も、何もかもネットを通じてチェックしていた。しかし、彼も、生きていかなくてはならず、ちょっと足をのばせば
すぐの場所に居たにも関わらず、オンエアを聴く事は叶わなかった。
その番組のオンエアが、今日、しかも 今の仕事場の目と鼻の先なのだ。

行かない筈が無い。たとえ、フルで聴けなかったとしても、雨が降ったと
しても、冷たい向かい風が吹いたとしても。それらの、一見"行けない理由"
に見える なんやかんや は、 全部、彼の気持ち一つで どうにでも
なるものだった。

3秒考えて、彼は決断した。行こう!ってさ。
はやる気持ちを抑えながら、携帯で、スタジオ迄の最善のコースを特定し、
ホームの階段を走リ降りて、電車に飛び乗った。

確か、以前 このあたりを通ったのは、もう、かなり前かもしれない。けど
そんな記憶の糸を必死に辿りながら、スタジオへの道を走った。

一時間の番組なのに、もう、スタジオがあるフロアについたら、残り15分
足らずだった。ようやく放送局のロゴが大書された、スタジオブースが
彼の目の前に姿を現した。
本当に いつもと変わらない調子で、両手にCD盤と、アナログのジャケットを
抱えて、DJは、ブースに立っていた。。。。
しかも聴こえて来たのは、"You Really Got Me"をVan Halenがやったやつで、
何度となく、ここぞ!というときにまわすDJのキラーチューンの一つだった。

そのリフが聴こえて来た瞬間、
彼は 時を忘れ、メランコリックという名の渦に魂ごと放り込まれた。

そのまま、エンドレスで、次の曲。カームダウンするときは、うってかわって
誰も思いつかないような曲のインストで、繋ぐのが、いつものスタイルだ!

スタジオの外には、何人かの、DJのファンなのだろう、まるで10代の頃の
彼を髣髴とさせるような、二人が、それぞれの思い思いの場所で、
受信していた。思い思いのやりかたでさ。

そんな三人の気持ちに触れたかのように、次のナンバーのイントロが流れた。

その最初の一音目が鳴った瞬間、彼の目の前のブースが滲んだ。
初めて聴いた瞬間から、どれだけ時間が 経ったか分からなくなった今も
なお、彼を その場所に引き戻してくれる"Video Kills The Radio Star"
だったからなんだ。

その曲に続けて、フロアでのMCとはちょっと違う よそ行きの声色で、DJは、
最後のナンバーを繋げる。そのときに、ブースの外で、リズムをとっている
3人をみて、あの最高の笑い方を 見せてくれたんだ。

その幾ばくかの数秒だけで、この辛かった数ヶ月の何もかもが
許される気がした。たとえそれが つかの間の幻だったとしても。

Radio Kills The Video Star, Video Kills The Radio Star.

まったく あの時の 場面の通りさ!


(Copyright:Taisuke Ebinuma 2009 All Rights Reserverd.)